近藤照男プロデューサーとは
近藤照男氏は、東映映画・美術出身のテレビ映画プロデューサーだった。(1929年生まれ 2006年2月20日没)
1968年4月6日から1985年7月20日まで足かけ17年に渡って放映されたTBS、東映による土曜夜9時アクションシリーズ。「キイハンター」から「アイフル大作戦」「バーディ大作戦(20話より「バーディー大作戦」)」を経て「Gメン75」「Gメン82(日曜夜8時)」「スーパーポリス」へと繋がる丹波哲郎主演のハードボイルド作品を手がけられた。
こちらでは、TBS・東映土曜夜9時アクションシリーズに特化して特集。東映社内報「とうえい」1968年11月号に掲載された「キイハンター」に対する近藤照男氏の見解と、1997年1月31日号「週刊テレビ番組」で特集された「Gメン75」への近藤照男プロデューサーの言葉をまとめておきたい。
常時20%以上の高視聴率を維持できるようになったキイハンターの秘密|東映テレビ部企画者 近藤照男
抜群のチームワークが高視聴率に
泡沫の様に消えて行く今日のテレビ番組の中にあって、「キイハンター」が高視聴率を保ち、放映延長になった要因は、類似アクションテレビとは違って、洗練された都会的スマートさをモットーとして斬新なハードアクションに徹し、それぞれ特異なキャラクターを持つ五人のレギュラーの魅力が遺憾なく発揮されているからだと思います。
出典:社内報「とうえい」1968年11月号/近藤照男
以下は近藤照男氏が執筆した記事のポイントのまとめである。
豪放磊落(ごうほうらいらく)で抱擁力のある丹波哲郎を中心とする5人のレギュラーたちのチームワークのよさ
・高年齢層の男女に:渋くて重厚なアクションの丹波哲郎
・インテリ層に:知的でクールなお色気の野際陽子
・若い男女に:アクロバットアクションの千葉真一
・低年齢層に:ハンサムなプレイボーイの谷隼人
・低年齢層に:可愛らしい大川栄子
出典:社内報「とうえい」1968年11月号/近藤照男
上記メンバーのそれぞれのリンクは、1968年11月より前の作品からピックアップしてみた。
作品のストーリー展開だけではなく、5人のメンバーのチームワークの良さをPR。製作現場では笑いの絶えない明るいチームワークが画面に反映されているとは近藤プロデューサー談。出演者のみならず現場の製作スタッフも同じだと綴られている。
興味深い点は、各レギュラーはそれぞれの視聴者層をターゲットにしていることである。
1968年当時は自分は8歳の小学2年生。当時を思い起こしてみると、「キイハンター」視聴は親やクラスメートの話題が発端だったが、毎週見て行くうちにお目当てはユミちゃん(大川栄子)と風間君(千葉真一)に絞られていた気がする。
ストーリーを追うよりも登場人物に惹きつけられた小学生だった。
Gメン75やGメン82の大泉撮影所で見学した自分は、本番撮影終了後の丹波哲郎御大を中心とする笑いの渦を肌で感じたことがある。オンとオフの切り替え。オフの撮影現場の明るさはGメン75シリーズでも継承されていた。
一つの番組が視聴率を向上し長く続くためには、スタッフ、キャストが全員一丸となって、東映テレビ映画の看板番組なんだという誇りと責任。これらが大切なんだと近藤照男プロデューサーは語る。
シナリオ作成段階でのロケ地選定
ロケ地を選定するために全国の観光案内や旅行ブックを取り寄せ、目新しいレジャー施設や各地の行事を調査、検討の上、シナリオハンティングに飛び出してゆくスタッフの意欲と記応力は抜群です。
出典:社内報「とうえい」1968年11月号/近藤照男
日本国中にロケをして、作品にローカルカラーを加味し地方へのPRも兼ねた活動の結果、地方局の平均視聴率は60%にもなったそうだ。
しかし、すべて計画通りに行くとは限らず。
キイハンター 26話「魔女がベルを鳴らす時」は熱海ロケだったが当初の予定では三重県の伊勢志摩だったとのこと。宿泊先の事情と制作側の都合が合わず断念。急きょ熱海に変更された。
詳細は「佐藤肇回想録」(著:佐藤肇 発行人:板垣哲郎 猫亭通信・梓)で佐藤肇監督が振り返っているので興味ある方は入手して読んでみて下さい。
裏番組の研究はニ、三か月先の情報をキャッチ!海外ロケで対抗
2、3か月先に他局が新番組スタートさせる情報をキャッチしてそれに対抗できる強力なロケ
出典:社内報「とうえい」1968年11月号/近藤照男
この手法は今も昔も変わらないが、当時、2クールを終えさらなる放映延長が決まった「キイハンター」。1968年秋は海外ロケ(占領下の沖縄)を敢行した。この沖縄シリーズは近藤照男プロデューサー談によると東映テレビ映画初の海外ロケだったそうだ。
大掛かりな仕掛け、ゲスト出演者の補強で絶えず一歩先を進むよう努めていると記されてあった。
そして、いかなるお膳立ても、それをうまく料理してくれるのは監督陣及び一般スタッフであり、東映の歴史の中で育った技術を十二分に生かして「キイハンター」に取り組んでいる努力が、「キイハンター」すなわち東映テレビ映画の信用度を高め、TBSスタッフ及びスポンサーサイドに高く評価され、毎週枚挙にいとまがないほど殺到するファンレターとなって現れてるゆえんです。
今後ますますテレビ界で高視聴率を保ち、活躍する「キイハンター」を応援してください。
出典:社内報「とうえい」1968年11月号/近藤照男
テレビ史を飾った人気番組の系譜(38)|Gメン75 週刊テレビ番組
この週刊テレビ番組の特集記事は、本放送が終了して10年以上経過した時に掲載されたものである。テレビ史を飾った人気番組の系譜(38)と称して「Gメン75」が全1ページで取り上げられていた。
この中から近藤照男プロデューサーのGメン75に対する声として回想コメントを拾ってみたい。
・「所轄管内の狭い範囲に縛られることのないGメンにすれば、海外の話なども含めて何でもできる。それで単なる刑事ものにはしなかったのです。」
・「とにかく権力を笠に着るのが嫌だった。いずれにしてもヒューマンなドラマにしたかった」
・「ホームドラマではない、おしゃれなものにしたかったこともあって、バタくさい目鼻立ちのハッキリしたキャスティングにした」
出典:週刊テレビ番組 1997年1月31日号(1146号)/近藤照男
以下は、近藤照男プロデューサーの言葉ではなく記者による番組紹介である。
GメンとはGOVERNMENT MENの略。警視庁の外部特殊チームでいかなる犯罪にも捜査を広げられる自由な刑事集団であるという基本設定。
さらに、女性Gメンを含め華やかでファッショナブルな雰囲気の個性派ドラマということを強調。
インパクトのある滑走路を歩くタイトルバック、哀愁ある主題歌、シリアスなストーリー展開、派手なカーアクションにファッショナブルなキャスト陣、度重なる海外ロケなどスケールの大きな刑事ドラマとして視聴者を釘付けにした名作だということが記者の手で綴られていた。
「キイハンター」からのアクション路線を引き継ぎ全354回(東映制作分)最高視聴率32%、平均で20%という大ヒット作だったことにも言及。
個人的には願わくば、メインライター・高久進氏の「番組制作の狙い」まで加えてもう少し突っ込んで紹介していただければなおよかったと思う。ともあれ「Gメン75」を忘れずに特集していただけたことは嬉しかった。
TBS・東映・近藤照男プロダクション制作・土曜夜9時アクションシリーズ
ハードボイルド2000トップページ
スパイキャッチャーJ3 レビュー
キイハンター(全262話)
アイフル大作戦(全56話)
バーディー大作戦(全54話)
Gメン75(全355話)
Gメン82(全17話)
スーパーポリス(全15話)
近藤照男2時間ドラマ「Gメン75スペシャル、黒木警察庁長官外伝、デモ作品」(全10作品)
※重要な修正、更新告知はこちら(最新5記事)
※新番組企画書はこちら
※Gメン75 滑走路ってどこ?はこちら
※Gメン75 地下取調室ってどこ?はこちら
※Gメン本部ビルってどこ?はこちら
Gメン’75、Gメン’82、キイハンター、アイフル大作戦、バーディ大作戦(バーディー大作戦)、スーパーポリス他|TBS、東映、近藤照男プロダクション・アクションシリーズ考察資料
・番組制作
東映
TBS
近藤照男プロダクション
・中部地区番組本放送/「アクションシリーズ」再放送
CBCテレビ
・中部地区再放送(キイハンター/カラー編)
東海テレビ
・DVD、BD、ビデオ発売(スパイキャッチャーJ3/キイハンター/Gメン’75)
東映ビデオ
・DVD発売(Gメン82)
ポニーキャニオン
・CS放送
東映チャンネル
ファミリー劇場
・DVDコレクション発売(Gメン’75)
デアゴスティーニ
・DVD発売(アイフル大作戦/バーディ大作戦 バーディー大作戦/スパイキャッチャーJ3)
ベストフィールド
・番組資料
Wikipedia(Gメン75、キイハンターほか)
テレビドラマデータベース
テレビジョンドラマ(有限会社放送映画出版:編集発行人・斉藤耕路)
TBSテレビニュース
テレビグラフ「ラブリー」
東映社内報「とうえい」
福島テレビ20年史
台本(準備稿・改訂稿・決定稿など)
海外ロケ手帳
ペップノベルズ(ペップ出版:Gメン75/Gメン75II)
毎日新聞
朝日新聞 ほか新聞各紙番組欄
週刊TVガイド
週刊テレビ番組
週刊テレビファン ほかテレビ誌
ザ・ベストワン(学研)
週刊明星
平凡
スタア ほか芸能雑誌
週刊マーガレット
週刊少女フレンド
セブンティーン
週刊少年サンデー
ぼくら
女性自身
旺文社・学研【学年誌】 ほか関連雑誌
週刊時事
週刊文春
ドラマ(映人社) ほかシナリオ雑誌
佐藤肇回想録 恍惚と不安(猫亭通信:著者・佐藤肇 発行人・板垣哲郎)
南海奇譚(文春文庫:著者・津本陽 解説・高久進)
暗殺教程(光文社文庫:著者・都筑道夫)
スパイキャッチャーJ3完全版【上下】(マンガショップ 原作・都筑道夫 漫画・堀江卓)
千葉真一特集号(近代映画 10月号臨時増刊/1969年)
少年宇宙人(二見書房:著者・切通理作、原田昌樹)
刑事マガジン(タツミムック)
にっぽんの刑事スーパーファイル(洋泉社MOOK)
映画監督 深作欣二(ワイズ出版:著者・深作欣二 山根貞男)
大俳優 丹波哲郎(ワイズ出版:著者・丹波哲郎 ダーティ工藤)
香港アクションスター交遊録(洋泉社:著者・倉田保昭)
夫婦愛(アミューズブック:著者・藤木悠・晶子)
人生フルターン 私は負けない(NHK出版:著者・藤田三保子)
好き勝手 夏木陽介(講談社:編著・轟夕起夫)
ヒーロー神髄(風塵社:著者・宮内洋)
続・「差別用語」(汐文社:編者・用語と差別を考えるシンポジウム実行委員会)
こちら亀有公園前派出所「せんだみつを主演・東映実写映画版」徹底研究(著:コノシート さんぽプロ)
・共同調査&共同制作(「ハードボイルド2000」キイハンターコンテンツ)
NWP夏目プロダクツ