Gメン’93春 第一級殺人の女

  バブル期の名残が漂う”HOTEL風・Gメン ハワイ編”

 (脚本)池田雄一(撮影)下村和夫(監督)佐藤純彌

 「Gメン82」1983年3月終了の10年後。
 鳴り物入りで新・Gメンが「月曜ドラマスペシャル」枠で復活したことがあった。
 このスペシャル企画を知ったのは、92年年末。
 東映撮影所へ通った時、知り合った友人を介してだった。そして新春、「ザ・テレビジョン
 1月23日号」を皮切りに、各TV誌がこぞって紹介記事を掲載した。
 Gメンファンにとって、期待するなという方が無理なくらいである。
 そんな期待を持って迎えた放送当日の結果はさておき、復活劇に酔いしれた放送開始前
 の当時の雰囲気を思い起こし、主な記事を記録しておきたい。

1.丹波哲郎・中村雅俊コンビであの「Gメン」が10年ぶりに復活 
 TBSでは、4月の期首特番として「
Gメンスペシャル'93・第一級殺人の女」を放送する。
 「Gメン」は「−75」が75年5月〜82年3月、「−82」が82年10月〜83年3月に計380回放送
 され、78年1・28土には32.2%の最高視聴率をマークした人気番組。
 今回は2時間のスペシャルとして復活する。
 出演は、丹波哲郎、中村雅俊、夏木マリ、哀川翔、田中美奈子、名古屋章、角野卓造ほか。
 脚本は石原雄一(池田雄一の誤植と思われる)、監督は佐藤純彌、制作は近藤照男プロ
 ダクション。・・・ストーリー解説(略)・・・
 近藤照男プロデューサーは、「ハードボイルドタッチに刑事や犯人の人間性を描くのがGメン
 の魅力。派手なアクションや銃撃戦をウリにしない刑事ドラマをもう一度登場させたかった」
 と語る。
<ザ・テレビジョン93年1月22日号>

 
2.懐かしの「Gメン」が10年ぶり復活

 あの懐かしい刑事ドラマ「Gメン75」が10年ぶりにTBSで復活。「
Gメンスペシャル'93
 第一級殺人の女
」(月2時間作品)と題して4月に期首特番で放送される。
 「Gメン75」は昭和50年から7年間にわたって丹波哲郎、夏木陽介、藤木悠、藤田美保子、
 倉田保昭、原田大二郎、夏木マリらの出演で放送され、30%の高視聴率を何度もマークし
 、正統派の刑事ドラマとして人気があった。
 その後、昭和57年秋から「Gメン82」が半年間放送され終了となった。
 平成5年バージョンとして復活するスペシャル版は、定年退職となる刑事を励ますためハワイ
 旅行にきたGメンのメンバーが、現地で刑事の妻の失踪にからむ殺人事件に巻き込まれて
 行くというストーリー。
 メンバーは黒木警視正の丹波、女刑事の夏木マリ以外は一新され、中村雅俊、田中美奈子、
 哀川翔、角野卓造、名古屋章が登場。
 制作・近藤照男プロダクション、脚本・池田雄一、監督・佐藤純彌は、かつて「Gメン75」を
 手がけたスタッフ。「かつての匂いも残しながら、新登場の本格的刑事ドラマにしたい。
 好評ならシリーズ化も・・・」と関係者は力を入れている。
<TVガイド93年1月29日号>

 

 ★ここではじめて丹波氏を中心とした4名の横並びカットが掲載されるが、地下取調室に
 見立てた屋内撮影のものであった。シリーズ化へのファンの期待が高まりつつあった。

3.丹波あってのあの”Gメン”が
   中村雅俊ほかの顔ぶれで復活

 ★この記事で初めて、全メンバーの横並びカット(地下取調室内)が登場する。
 タイトルもまだ「
Gメンスペシャル'93・第一級殺人の女」。英語ペラペラの警部役である中村
 雅俊氏のコメントも掲載されてあった。
 「丹波さんはGメンを始めた18年前から今まで”スゴミ”が衰えていない」
 ・・と感嘆しきりとのことだった。
<ザ・テレビジョン93年2月12日号>

4.わたしつくる人 佐藤純彌 監督

 ★「Gメン’93春”第一級殺人の女”」(12<月>夜9:00TBS系)を担当。
 新メンバーでの復活について「昔のメンバーで活躍を、と思っていた方もずいぶんいました。
 が、10年たって、混沌とした現代の犯罪の真実を追及する”Gメン”を描きたかったので
 メンバーは変えました。新しいGメンがどうつくれるかという思いもありましたから」と語る。
 だが、Gメンのもつ”人間性を深く描写する”という基本方針は変わっていない。
 2時間ドラマのため無理な設定や展開もなく、おもしろく、かつ深く事件の核心に迫ることが
 できたとも。
<掲載テレビ誌不明:資料提供/睡蓮75さま

   
  
■写真左から・・高木綾子(田中美奈子)、橋口刑事(哀川翔)、江藤香子警部補(夏木マリ)、黒木警視正(丹波哲郎)、
   唐沢警部(中村雅俊)、寺岡部長刑事(角野卓造)、古田刑事(名古屋章)
・・平成5年バージョンの”新Gメン”

5.その他 
 

 朝日新聞 93年2月23日
(夕刊)
 
週刊テレビ番組 93年2月26日号
 
TVガイド 93年3月26日号・・・「特別企画Gメン'93春 第一級殺人の女」に改題。
 ★丹波氏コメント「気楽に行こうぜ」
 中村氏コメント「今回はジブくキメた。動より静、メンバーそれぞれの人間ドラマを見てほしい。」
 その他、元ロス警察のジミー佐古田氏がハワイの捜査官としてゲスト出演・・と記載。
 
ぴあ 93年4月6日号・・・オープニングの一列横隊、あのテーマ曲。このシーンでキマリ・・
 ★なんとも紛らわしい表現で、「Gメン75」と「太陽にほえろ!」との対比を語るあたりで
 期待は頂点に達した。(^^;)
 この時点で、夏木マリさんが<津川警部補>ではなく<江藤警部補>であることが判明し
 愕然とする。津川警部補は結婚したのであろうか・・。ファンの勝手な解釈が続く・・・。
 しかし、結果は全くの別人と判明する・・・。
 


 ・・・★
 内容、雰囲気は「Gメン75No.80 
暗闇の密室殺人」と同一プロット+「HOTEL」であった。
 「暗闇の密室殺人」は1時間枠であったからこそ、無駄のない展開で視聴者を魅了した密室
 劇の傑作となったが、このスペシャルは2時間枠であったため、捜査とは関係ない部分を
 クローズアップせざるを得ないこととなった。
 近年の変装刑事に頼った荒唐無稽な「Gメン75スペシャル」とは異なり、リアリズムを追求
 しようとした姿勢は評価に値するが、ハワイでの海外ロケの必然性が感じられないテーマや
 動きの無い展開、レギュラー刑事のプライベート部分を浮き彫りにし過ぎた内容など、
 往年の「Gメン75」シリーズ復活と期待したファンにとって、あまりにも当時のイメージとかけ
 離れた作風はとまどいを与えるだけとなった。
 期待した一列横隊のオープニング、テーマ曲にも再会できず、残念な結果となった。
 モチーフとなった「ロス警察」シリーズや、全くの別番組(2時間サスペンス)として制作された
 のなら違った評価になったと思われる。黒木警視正の登場シーンのみ当時の「Gメン75」的な
 部分を感じ取ることができた。
 中部地区のみ17.1%の視聴率を得る結果となった。
 その後、望まれていたGメン新作のシリーズ化は幻となり、新作用の時間枠と思われる時間
 帯火曜夜9時に「
新幹線物語’93夏」(丹波哲郎、小林稔侍、宮崎ますみ、哀川翔ほか)
 が1クール放送された。
 サブタイトルにGメンで使用したタイトルが使用されたこと、丹波氏の役名が<東京駅長・
 黒木哲也>であったこと、EDが滑走路ではなく東京駅のプラットフォームを一列横隊で歩く
 パーサーたちであったこと・・などから推察すると、Gメンのシリーズ化を狙った当時の
 制作スタッフの無念の叫びのような気がしてならなかった。
 
 
 
 ・・・★
 尚、黒木警視正は、Gメンのボスという描き方ではなく、警視庁サイドに専用室を構える
 いわゆる結城警視正のような幹部要員となっていた。
 (秘書に江藤香子警部補)
 Gメン本部というものは登場せず、「−82」終了後、インターポールへ派遣されたGメンは、
 数年後再編成され警視庁幹部となった黒木の下で警視庁の中の一部所として存続して
 いたようだ。
 しかしこのスペシャルでは、従来のような<独立したスペシャリスト捜査機関>という設定
 ではなく、なぜか<警視庁のはみだし警官集団>というやっかいものの集団として
 描かれていた点もファンとしては気になるものであった。

  
資料協力:睡蓮75さま

 
■STORY■
 1983年3月。全員でパリ・インターポール本部へ派遣された”Gメン”。
 10年後の1993年4月。警視庁側に転属となった黒木警視正は、捜査一課の唐沢警部らを
 集め新たなるGメンを警視庁内に編成していた。
 唐沢は数日後に定年退職する部下の古田刑事の慰労をかねてハワイ旅行を企画していた。
 そんな唐沢には苦い思い出があった。
 自宅に押し入った強盗に拳銃で撃たれ、妻の冴子はそれ以来、消息を絶っていた。
 傷心の唐沢は、部下の寺岡部長刑事らを伴い日本を後にし、ホノルルへ向かった。
 さらに飛行機を乗り継ぎ、最終目的地のハワイ島へ到着。つかの間の休日を楽しんでいた。
 そんな唐沢は、妻の冴子とよく似た女性を街で見かける。



 五つの顔の変装刑事・右京警部補ファイルE
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