プロフェッショナル・キイハンター、次の赤いシグナルは・・・


No.1 裏切りのブルース (68年4月6日放映  ラストシーン撮影3月14日)
脚本・高久進、深作欣二  撮影・下村和夫  監督・深作欣二 
出演者・黒木、啓子、風間、島、ユミ / 村岡室長
主役・黒木
ゲスト・青木義朗、オスマン・ユスフ、リンダ・ハウティスティ、南原宏治
 
 
原案・都筑道夫
 録音・岩田広一
 照明・酒井信雄
 美術・兼子元
 編集・大橋四郎
 記録・とうまひろ子
 助監督・山内柏
 擬斗・日尾孝司
 進行主任・深沢道尚
 現像・東映化学工業株式会社
 音楽・菊池俊輔
 主題歌・キイハンター非情のライセンス
(作詞)佐藤純弥(作曲)菊池俊輔(唄)野際陽子
                       テイチクレコード


☆シカゴのマフィアが現実に起こした事件をもとに、都築道夫がプロット作成。
 毎回推理作家が構成を担当するという贅沢な制作が1クール続いた。
 謎とサスペンス、雰囲気はハリウッド調を目指したものの、当初1クールは視聴率的に苦戦。
 千葉真一のダイナミックなアクションをウリにしたドラマへと変貌し、和製ハードボイルドは7年後の
 「Gメン75」まで影を潜める結果となった。
 第一話ラストの多摩川べり工場地帯での死闘、黒木の親友が黒幕で信じていた友情を裏切られた
 非情な結末は、後のGメン75を彷彿させるような仕上がりだった。
 それにしても津川啓子の設定が、スイス政府が発給した公務のパスポートを持って日本へ潜入した
 フランス情報局の女探偵・・・???だなんて?
 ユミちゃんに「・・何よあんな国籍不明の・・・」とか言われてましたけど、うなづけます。
  尚、第一話の構成は、後のGメン75「
Gメン対エーゲ海の骸骨」にも 一部活かされている。

☆週刊TVガイド誌(1968年4月)
 <和製ハードボイルドの決定版めざす『キイハンター』見開き5ページより抜粋>


  

  
当時の番宣記事(週刊TVガイド誌)

 ロケは三月十四日、午前八時、京王線中河原駅近くの多摩川べりの工場地帯でおこなわれた。
 ひさしぶりの晴天。春風が心地よく、多摩川の水も春を感じさせる。
 ヒューム、パイルが積み重ねられた一角に、シボレーが一台。その数メートル先にはコロナが一台。
 そのなかで人質にされた女の背中にはピストルが・・・。そして彼女を救うためにシボレーに乗って
 いた一人の男が勇敢にもコロナにむかって近づいていく。
 これはTBS・朝日・CBCテレビの4月新番組(4月6日から毎週土曜夜9:00〜10:00)のラストシー
 ンである。

  
・・・(中略:メンバー紹介、番組紹介記事)・・・・

 話をロケ現場に戻そう。「キイハンター」第一回の「裏切りのブルース」の大詰めのシーンが展開
 されている。
 スイス銀行の預金者リストを盗み出したギャングが、そのリストを写したマイクロフィルムを謎のチャ
 ーチル・コインに隠した。その行方を追って”キイハンター”の活躍がはじまるという筋だ。
 この話は、かつてシカゴのギャングがスイス銀行の預金者を脅迫した実話をプロットに組んだもの。
 ついでにいうと、スイス銀行は、たとえその人が犯罪者であっても、預金者の名前を公表しない。
 逆にみれば預金者の脱税に都合がいいわけだ。
 
 大詰めのシーンは黒木の持っているフィルムと、人質にされたユミとを、交換するシーンだ。
 近づく丹波に、ギャングの拳銃が発射される。丹波は身軽に物かげにかくれる。
 その時、泣き顔の大川栄子は、皆が待つ車に逃げ込んだ。
 残るは素手の丹波と拳銃を持つ男との息詰まる対決。まさにプロ同士の対決である。
 だが息が合わず、何回もNG。ようやく昼近くになって迫力のある決闘シーンが撮れた。

 朝早くからのロケで皆お腹がペコペコ。
 何かおいしいものをと一同願ったが、あいにくこの付近どこを回ってもレストランらしいものはない。
 数キロ先の府中カントリーのロッジでようやく昼食と相成った。
 が、ここもゴルフ場とて、支配人がでてきて責任者はだれかとうるさいこと。こうなったらなんでも
 いいから食べさせてもらえればの心境。
 一同、一気に食べ終わると、待ってましたとばかり請求書が出て追い出される。アタマにきただれか
 が、トイレにおいてあるタオルで足をふいてきたというウワサも流れて、せめてものウップンばらし
 だ。

   
佐賀新聞より 第一話・番宣写真

 当時の番宣記事(週刊TVガイド)
(調査:夏目プロダクツ夏目さま)
 
 こんなわけで昼食もそこそこ一同またロケ現場に戻って休憩。
 暖かい春陽の陽射しに包まれて椅子に寝転んだ丹波、カーキチこと谷隼人は千葉真一の乗って
 きたスポーツカー(マツダスポーツ)に乗ってあたりをぐるぐる回っている。
 婦人組の野際と大川は車の中で昼寝。それぞれ撮影開始までのんびりと過ごしている。

 そこでちょっとインタビュー。
 まず丹波「TBSテレビ初出演なんですよ。とてつもなく面白いものにしたいというのが願いです。
 われわれはプロとして活躍するんだから、射撃がうまいのはあたりまえだし、第一ピストルを撃つ
 のがハードボイルドじゃない。それよりもいかに恐ろしくなぐるか、いかに恐ろしく車をぶつけるか、
 いかに恐ろしいはなれわざを合理的にやってみせるか、それを研究したいね。」と例の大声で
 まくしたてた。

 −黒木という役はたいへん女性にもてるんですか?
 「もてるというより、女性美をいち早くみつけるだけですよ。根はさびしい男なんでしょうね・・・」
 ニヤリとした。言外に、ご自分のPRがにおっている。
・・・(中略)・・・

 最後に「キイハンター」のトップバッターに立った深作欣二監督のはなしをきこう。
 「ハードボイルドは、ハードボイルドと正反対のセンチメンタリズム、あるいはロマンチシズムとの、
 うまいバランスがとれたとき、いいハードボイルドになる」
 このことば、はじめに紹介した丹波哲郎の考えと、うまく対応しているところがミソだろう。
 またこの番組の主題歌「非情のライセンス」は佐藤純弥作詞、菊池俊輔作曲で、野際と丹波が
 デュエットで吹き込んでいることにもご注目。丹波の声が大変にイカシテいるのだ。
 
(実際は野際陽子さんのソロ)

☆週刊TVガイド誌<TVあの人は今・・・ 「キイハンター」で人気だった大川栄子さん より抜粋>
 スタート時は成城大学に通う2年生で、登場者の中でマスコット的な存在だったのを印象的に
 覚えている方も少なくないだろう。
 「あのドラマの第一回目は深作欣二監督の作品なんですが、凝りに凝っていました。
 何しろオープニングの撮影で日比谷公園から鳩が飛び立つシーンを狙ったものの、その日は鳩
 が集まらなくて撮りを中止するほど。
 1本撮るのに1ヶ月ぐらいかかったような気がしましたね。でも共演者同士とても仲が良くて。
 もうプロデューサーが嫉妬(しっと)するぐらい。
 よく野際さんや千葉さんにスキーに連れて行っていただいたり。(番組の)後半あたりからおふたり
 は恋人だったらしいんですが、私はいつも金魚のフンみたいにくっついて歩いてまして、スタッフ
 から”栄子、少しは気をきかせろ!”なんて言われてまして・・・」。
 青春まっ盛りだった大川さんにとって、「キイハンター」出演当時の思い出は尽きないようです。

 
 ←番宣写真より

 

 −あらすじ−
 ジュネーブからエレナという女性が来日した。黒木鉄也という婚約者を訪ねて来たが、案内された
 バーで出会った黒木を見て、黒木鉄也ではないと言う。
 スイスで結婚を誓った黒木の写真を見せられ、黒木は驚く。彼の元同僚・藤崎だった。
 かつて黒木は藤崎と同じ国際警察員だったが、人間的な失敗をも許さない権力機構に嫌気が差し
 自ら辞職した過去があった。
 藤崎は、黒木がマドリッドで敵の手に落ちた時、救ってくれた命の恩人でもあった。
 非情な諜報部員の掟を知っている黒木は、エレナに藤崎との結婚を諦めるよう説得する。
 そして帰国するよう促した矢先、彼女は何者かにヒキ殺されてしまう。
 翌日、国際警察特別室の村岡に呼び出された黒木は、藤崎が1ヶ月前スイス山岳地帯で
 自動車事故に遭って死亡していた事実を知らされる。
 藤崎は、村岡の密命を受けジュネーブに派遣されていた。
 事故は巧妙に仕組まれた殺人では?と疑う黒木。
 復職を願う村岡の制止を振り切って独自に捜査を開始する。
 そして事件を追うもう一人の女が現れた。名は津川啓子。フランス情報局の女探偵だった。
 事件には、スイス銀行の預金者リストをめぐる国際的なユスリが絡んでいるらしい。
 日本政府高官の汚職事件とヨーロッパマフィアとの繋がりが明るみに。
 事件の真相を追っていた時、黒木が住むマンションの大家の娘・谷口ユミが何者かに誘拐
 された。
 謎の男・ロベールから黒木が押収したマイクロフィルムとの交換を迫ってきたのだ。
 黒幕は何者なのか?姿なき脅迫者の指定場所に行くと、そこには死んだはずの藤崎の姿が
 あった。むごい真実が黒木の前で明らかになる。


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